今回から、いよいよ実践編。筋トレの効果をより高めるためのポイントと、EMS機器のとっておき活用術を紹介します。
筋トレは自分の身体ひとつあれば、自宅でもできます。バーベルなどの器具がなくてもOK。まずは自重トレーニングの腕立て伏せや腹筋から、始めてみましょう。
前回"「速筋」は重い負荷をかけないと鍛えられない"と、お話ししました。しかし実を言うと、軽い負荷でもやり方次第で効果が得られます。具体的にはスピードを付けて、疲労困憊するまで反復する。たとえば腕立て伏せを30回できる力があるなら、50回〜60回にチャレンジして"もうこれが限界"というレベルまで追い込む。軽い負荷でも疲れてくると「遅筋」に加えて、温存されていた「速筋」が動員されるんです。
その際に大切なのが呼吸で、鉄則は"力を入れる時に息を吐き、ゆるめる時に息を吸う"。より正確にいうと"筋肉が収縮する時に吐く"ということです。
慣れないうちはグッと歯を食いしばって、呼吸が止まりがちになります。これは酸欠状態と血圧の急上昇を引き起こす危険な状態を、自ら作り出すようなもの。だから絶えず酸素を取り込めるよう"吐く"と"吸う"を身体に覚え込ませるんです。
感覚がつかめない場合は"吐く"方に集中してください。ゆっくりの時は"ハ〜ッ"と、速い時は"ハッ"という具合に動作に合わせて吐く。そうすれば自然に酸素が肺に入ってきて"吸う"方もできるようになるでしょう。
次に大切なポイントが意識。よく、鍛えたい部位の筋肉に"強くなれ"と語りかけると効果的と言われます。まったくその通りで、言い換えれば"意識を集中させろ"ということ。筋肉は、脳からの信号が脊髄の運動神経を伝わって収縮する。脳が"収縮しろ!"という指令を出すわけです。
ところが他のことを考えながらやっていると、この指令が伝わりにくくなってしまう。そうやって1時間だらだら続けても時間のムダ。15分でも十分です。短期間、意識を集中させて行った方が、筋肉は確実に鍛えられます。
もうひとつ覚えておきたいのが、筋トレに適切な2つの時間帯。
この時間帯は「交感神経」が優位になっています。これは簡単に言うと、身体を活発化させる「戦闘モードの神経」。筋トレには一にも二にも気力と集中力なので「交感神経」が働いている時間帯に行うのがベストというわけです。
これに相対する「副交感神経」は、身体をリラックスさせる「休息モードの神経」。これら2つの自律神経の切り替えは、身体が自動的に行っています。以下の4つの時間帯は「副交感神経」が優位(空腹時を除く)なので、筋トレは控えましょう。
起床直後の身体は就寝中に汗をかいたため軽い脱水症状になっていて、血液もドロドロ。こんな状態で負荷をかけるのは、危険極まりありません。また寝ている間は、筋肉の成長を促すホルモンが分泌されます。筋トレと睡眠はクルマの両輪。就寝直前に筋肉を刺激して、せっかく休もうとしている身体を覚醒させては逆効果です。
空腹時は交感神経が働いている点は良いのですが、筋肉と脳にとって大切なエネルギーである糖が不足しています。こんなタイミングでの筋トレは、ガソリンが入ってない状態でエンジンをブン回すのと同じ。脳も十分に働いていないので、気力も集中力も続きません。また食事直後の身体は、消化器系を働かせるのに精一杯の状態。消化と筋トレを同時にこなせるほど、器用ではありません。
あくまでも、身体の自然なサイクルに合わせて筋トレを行うから効果が得られるんです。
家庭用EMS機器の購入を検討中の方もいらっしゃると思います。最後に、その活用術を紹介しましょう。
筋肉は限界まで追い込まないと鍛えられませんが"言うは易し行うは難し"で、実際にやってみるとかなりキツい。そんな時こそEMS機器の出番です。しんどくなってきた段階でEMS機器の力を借りて、強制的に収縮を促すんです。こうして使い方を工夫すれば、自分では不可能と思っていたレベルまで鍛えることも可能になります。
ただしEMS機器は直接筋肉に電気を流して収縮を促すため、通常の筋トレのように脳と運動神経を動員するのは無理。だから身体全体の機能を上げるためには筋トレを主にして、EMS機器はサブで併用しましょう。