2019/11/25

【vol.4】有酸素運動の効果をMAXにする秘訣

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筋トレと並行して行うと良いとされる有酸素運動。比較的軽い負荷で行えるためラクをしがちになりますが、"筋肉を鍛える意識でやる"が森谷先生のポリシーです。

◆だらだらウォーキングは時間のムダ

有酸素運動とはその名の通り、身体に酸素を取り込んで脂肪を燃焼させて行う運動。代表的なのはウォーキング、ジョギング、エアロビクスで、主に脂肪をエネルギーに使う「遅筋」が動員されます。「遅筋」を鍛えておけば、基礎代謝が向上して太りにくい体質になるだけでなく、血行の改善や心肺機能も強化されます。

下半身には、全身の約3分の2の筋肉が集中しています。なかでも脚の筋肉は"第2の心臓"と呼ばれるほど重要な"臓器"です。どういうことかというと、心臓はポンプのように血液を送り出し、全身に酸素を循環させる。同じように、脚の筋肉は収縮を繰り返すことで、下半身に巡ってきた血液を心臓に押し上げる。まさに"2つめのポンプ=第2の心臓"と呼ぶにふさわしい役割を担っているわけです。

だから下半身の筋肉が活発に働けば、それに呼応して心臓の働きも活発化して、心肺機能が強くなるという好循環が生まれるんです。

有酸素運動は比較的軽い負荷でできますが、あくまでも"筋トレをする"という意識で取り組みましょう。一番ダメなのがだらだら歩くこと。これでもまったく脂肪が燃えないわけではありませんが、効果はしょせんその程度。筋肉はほとんど鍛えられません。同じ歩くなら、スピードと歩幅を徹底的に意識してください。

◆歩くスピードと歩幅は健康のバロメーター

興味深いデータを紹介します。アメリカで21年かけて34000人の高齢者を対象に行われた調査報告で、以下のような結果が出ました(※1)。

 75歳の時点で歩くスピードが「遅かった人」→85歳時点の生存率19

 75歳の時点で歩くスピードが「速かった人」→85歳時点の生存率87

以上が男性のデータ。女性の場合はどうなるか?

 75歳の時点で歩くスピードが「遅かった人」→85歳時の生存率35

 75歳の時点で歩くスピードが「速かった人」→85歳時の生存率91

どうですか? 歩くのが遅いと"確実に早く死ぬ!"ということが、これ以上ないぐらいハッキリしましたね。ちなみに男女ともに最速は秒速1.6mと、かなりの健脚です。この調査結果が明らかになってから、アメリカでは健康の指標として歩くスピードを重視するようになりました。

もうひとつデータを紹介しましょう。こちらは東京都の研究チームが10年かけて、1149人の男女を対象に追跡調査したもの(※2)。歩幅が「広い人(男:70.6cm・女65.1cm以上)」が認知症になる確率を「1」としています。

 歩幅が「普通の人(男:61.970.6cm以上・女58.265.1cm)」→認知症になる確率1.22

 歩幅が「狭い人(男:61.9cm以下・女58.2cm以下)」→認知症になる確率3.39

女性単独の結果を見ると、歩幅が狭い人の数値は5.76。認知症になるリスクが、最大約5.8倍までハネ上がってしまいました。認知症の主要な原因は、足腰の衰えにあったのです。

日米2つの調査結果から言えるのは、やはり"筋肉が大切"ということ。スピードと歩幅が落ちるのは、下半身の筋肉が衰えるから。グイグイ歩けなくなれば心肺機能も脳も衰えて、死亡や病気のリスクが高まるのは当然なんです。

1:『The Journal of the American Association』『Gait Speed and Survival in Older Adult』(2011年)

2:東京都健康長寿医療センター研究所(2013年)

◆メリハリをつけて筋肉と脳を同時に刺激

ずっと同じスピードで歩き続けるのがシンドイ...という方もいらっしゃるでしょう。でも心配はいりません。

10分ウォーキングするなら、最初の3分は速く、次の3分はゆっくり、最後の3分はまた速く...という具合にメリハリをつければ問題ナシ。むしろ、こうした方が「自律神経」が活発に働いて、脂肪が燃えやすくなります。

人間の身体というのは、同じ状態が3分以上続くと自動操縦状態になり、呼吸や心拍数が安定する。"安定"というと良いイメージかもしれませんが、実は「自律神経」が機能していない状態。トレーニング効果を得るには、頻繁に身体のスイッチを切り替えることが大切なんです。

慣れてきたら、ジョギングやダッシュを織り交ぜてみましょう。とくにダッシュは動作が速いので「速筋」が動員される。つまりウォーキングで「遅筋」を、ダッシュで「速筋」を同時に鍛える"ハイブリッド筋トレ"が可能になるわけです。

このように"歩く"という動作ひとつ取っても、工夫次第でトレーニングのバリエーションを広げられます。今すぐシューズとウェアを揃えて、一歩を踏み出しましょう!

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森谷敏夫京都大学名誉教授

森谷敏夫
京都大学名誉教授

1950年、兵庫県生まれ。国際電気生理運動学会、国際バイオメカニクス学会など、多数の学会で会長、理事、評議員を歴任。世界で初めて、筋力増大に対する神経的要因の貢献度を評価した。

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