筋トレの効果をアップさせる秘訣は、正しい量のタンパク質を、正しい方法で摂ること。同時に筋肉の成長をサポートするビタミンやミネラルも、野菜から摂りましょう。
タンパク質は、筋肉をつくる基となる栄養素。筋肉だけでなく肌、爪、髪、内臓などをつくる材料にもなっています。ビルを建てるのにコンクリートが必要なように、身体づくりにはタンパク質が必要不可欠というわけです。
では1日にどのぐらいの量を摂れば良いのか? 答えはズバリ"体重1kgあたり1g"。体重が60kgの人なら、60g摂ることになります。
1度に身体が吸収できるタンパク質の量は、限られています。また、筋肉の合成は24時間、休まずに行われています。だからタンパク質の補給も、少しずつこまめに行うこと。1日に60g摂るなら朝20g、昼20g、夜20gと分割するのが良い。朝はスムージー、昼はざるそば、夜だけステーキを300gドカ食い!というのは最悪。夜になって一度に吸収し切れない量を摂っても意味ナシです。
そして大切なポイントが、タンパク質の補給は筋トレとセットで行うということ。トレーニングをしなければ、いくらタンパク質を摂っても筋肉の成長はのぞめません。この関係性を証明する、興味深い実験がカナダで行われました。
一生懸命に筋トレをしてタンパク質をしっかり補給すれば、1ヵ月弱という短期間でも筋肉は増える。もちろん皆さんはここまで追い込む必要はありませんが、高いシェイプアップ効果が証明されたわけです。
※【参考文献】「京大の筋肉2」2018年、デジタルアーカイブズ(株)
タンパク質には肉、魚、卵、牛乳などに含まれる動物性タンパク質と、大豆などに含まれる植物性タンパク質があります。そして動物性のなかでも牛乳やヨーグルトに多く含まれる「ホエイタンパク質」は、もっとも筋肉の合成に良いとされています。だから、このコラムの【vol.5】でお話しした通り、筋トレ直後のタンパク質補給には乳製品がオススメ。ただし必要量の20gを摂るには、コップ3杯(約600 mℓ)の牛乳を飲まなければならない。無理な場合は、ホエイプロテインやアミノ酸などのサプリメントを併用しましょう。
アミノ酸とは、タンパク質を構成する成分のこと。アミノ酸の分子が100個以上つながると、タンパク質になります。食事で摂ったタンパク質は一旦アミノ酸に分解され、再び合成されるため、消化・吸収に3〜4時間かかる。ところがアミノ酸のサプリメントで直接摂れば、30分程度で消化・吸収されるんです。
一口にアミノ酸と言っても約20種類あり、少しずつ働きが異なります。たとえば卵白などに含まれる「ロイシン」というアミノ酸は、筋肉の合成を高めるだけでなく、分解を抑える効果があることがわかっています。
しかしだからと言って卵なら卵だけ...と単一の食材ばかりでは、決まった種類のアミノ酸しか摂れません。偏食をせず、いろいろな食材をバランス良く食べるのが大切です。具体的には肉、魚、卵、乳製品、大豆製品から1食2種類ずつ、1日の食事のなかで摂れるよう献立を工夫しましょう。
食事のときには、野菜や海藻も摂りましょう。ビタミンやミネラルには、筋肉の成長を助ける働きがあるからです。たとえばビタミンB6は、タンパク質をアミノ酸に分解するときに活躍する。ビタミンCは、ハードな筋トレで疲れ切った身体の免疫力を高めてくれます。
カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルも、タンパク質の代謝をサポートするために欠かせない存在です。
野菜や海藻に含まれる食物繊維によって腸内環境を整えることも、とても大切です。皆さん「腸内フローラ」って聴いたことありますね? これは腸の中に1000種・1000兆個以上生息している細菌のことで「善玉菌」と「悪玉菌」、そのどちらにも変化する「日和見菌」の3種類あります。肉や魚ばかりを摂っていると「悪玉菌」が増え、便秘や下痢、さらにはガンや糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因になる。だから野菜を摂って「善玉菌」を優位にしておかなければならないんです。
それを考えると、和食は素晴らしいですね。納豆、卵かけごはん、魚、野菜、海藻からタンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維をバランス良く摂れる。ここ最近、和食の良さが見直されていますが、日本は筋肉にとっても理想的な食文化を育んできたわけです。ユネスコ無形文化遺産に登録されたのも、納得できます。